野にイケンあり〜ジャーナリスト武田一顕が詠む時政

政局や中国について【野の意見】を個人の備忘録として書き連ねる。 よろしくどうぞ。

ラチあかず 端役ももらえず 北(ほく)そえむ

二回目の米朝首脳会談が物別れに終わった。

トランプ大統領が会談前に

かなり前のめりの姿勢だったことから、

大きく譲歩するのではないかという

推測があったが、

トランプ氏は意外にまともで

北朝鮮の要求を突っぱねたようだ。


金委員長は不機嫌だったようだが、

スーパーパワーの長であるアメリカ大統領を

ハノイくんだりまで引っ張り出しただけでも

首尾上々といえるだろう。

表情が本当だとすれば、

それは不機嫌というより不安。

自ら、もしくは自らの国が

爆撃されるかもしれないという不安の表情。

 


トランプ氏の対中国、対北朝鮮外交には

あるパターンがある。

交渉相手を、ツイッターを含めて

公の場では徹底的にほめる。

習近平国家主席も金委員長も

民主主義とは程遠い制度で選ばれたトップだが、

トランプ氏にとっては「すばらしい友人」。

ただし、交渉に入ると意外と厳しく対応する。
今回も、米中貿易協議でも、安易に妥協はしない。

公の場で相手をけなさないのは、

中国人や朝鮮民族がメンツを重んじることを

知っているからだろう。

…それに比べて、ノーベル賞候補推薦を

バラされてしまったトップがいる日本は、

それほど面子メンツと言わないことも

知っているのかもしれない。

 

閑話休題

 

アカデミー賞も発表されたが、

今回の首脳会談を映画に例えるなら、

主役はドナルド・トランプ金正恩のWキャストで

準主役が習近平と言ったところか。

主役に自国内を列車で通過させただけで

存在感を増した習近平は、

孫氏の兵法「戦わずして勝つ」を地で行き、

主役を食ってしまう大物俳優の役割を演じた。

 

次に美味しい思いをしたのは、金正恩

この若手俳優は、軍備を増強し

自国民を虐げ続けているにもかかわらず、

なんだか洗練されたイメージを残しつつある。

ヤクザ映画なんかだと、

新興の若頭でこういう人がいる。

ドナルド・トランプ

わざわざ何時間もかけてハノイまで来て、

何も手にせず帰国した。

帰国後は、ロシアゲート疑惑での追及を受けるし、

良いことなしの少しマヌケな役回り。

外交では、

民主国家は独裁国家にかなわないという。

一つの理由に、懸けている命の違いがある。

アメリカのトップは外交で負けても

政治生命を失うだけだ。

一方、中国のトップは外交で負けると

社会的に抹殺される可能性がある。

社会生命を失うことがあるのだ。

北朝鮮では、ホントの命を失う可能性がある。

トップではないが、ナンバーツーだった

金委員長の義理の叔父・張成沢氏は、

2013年12月、処刑されている。



北朝鮮に関して、私がこの10年以上

訴え続けていることが2つある。

一つは、日本は残念ながらもう、

核を持った北朝鮮と向き合うことを

考えなければならないということ。

今回の首脳会談でも、

北には核を放棄する意思がないということが

明白になった。

もう一つ、

アメリカが北朝鮮に核を放棄させたいなら

方法は一つしかない。

北朝鮮爆撃だ。

 

正恩氏がトップに就任する以前、

北朝鮮が国際舞台に出てきたのは、これまで2回。

93年の核危機と、2002年の小泉総理訪朝の時だ。

いずれも、自分の国が

アメリカに攻撃される一歩手前という瀬戸際で

国際社会に登場した。

自分が殺されるかもしれないというところまで

行かないと北は動かないのだ。

物騒なことを言っているのは百も承知だが、

現実は北朝鮮爆撃だけが

核放棄につながる可能性のある唯一の方法だろう。

トランプ氏も少しは分かったのではないか。

 

日本も考え方を変えないといけない。

敢えて言う。

日本はもう拉致事件の重要度の順位を下げて、

とにかく北の核を何とかしなければならない。

同時解決は無理だ。

 

もう持ってしまった北の核が使用されないよう、

いかに安全に運用するか、

そういうことを真剣に考える時期に来ている。