元号と ともに刻む名 菅長官
安倍総理がやりたかったのだろうが、
いまの自民党は前例主義を壊すことができない。
この場合の前例主義は、
官僚主義とほとんど同じ意味だと考えてよい。
◆
かつて先輩から聞いた話だ。
「平成おじさん」「平成長官」と呼ばれた
小渕恵三・元総理は、1987年から89年まで
竹下内閣の官房長官を務め、
毎日のように記者会見をした。
しかし、会見が終わってしばらくすると
事務方から紙やスピーカーで
「先ほどの官房長官会見で、
△△の部分は誤りでした。正しくは〇〇です」と
頻繁に訂正が入る。
先輩たちは、仲間と
「これじゃ、ヘイセイ長官じゃなくて、
テイセイ長官だわな」と揶揄していたそうだ。
そして、当時は竹下登総理が
強力なリーダーシップを発揮し、
「平成」という元号発表がなければ
官房長官としての小渕の名は、
殆どの人の記憶から消えていたかもしれない。
◆
それに比べ、在職日数で一位の記録を更新中の菅は
名実ともに、敏腕長官の一人として
政治史に名を刻むのは間違いない。
菅は酒を飲まないことで知られている。
朝食から始めて一日に4件も5件も会食をハシゴし、
人の話に耳を傾けるそうだ。
しかも、話の内容をよく覚えている。
政治家だから当たり前と思うかもしれないが、
そんなことはない。
彼ら彼女らも人間だから、
酔って話したことなどはよく忘れている。
菅は酒を飲まずに話しているから
内容までよく覚えているのだろう。
また、メディアとの接し方で言うと、
菅の凄みはメディアの偉い人たちと
頻繁に会食を重ねるところにある。
元J通信のT氏は有名だが、
テレビ局の社長、会長ともよく会っている。
トップを捕まえておけば、
所詮サラリーマン記者の連中は
言うことを聞くだろうという算段で、
実際にそれはかなり成功している。
安倍政権の火種になるものはあらかじめ
できる限り潰すべく、
四方八方にニラミを利かせてきた菅官房長官。
4月1日11時半。
脇を固める役者から、成田屋ばりの千両役者へ。
菅の、一世一代の大舞台の幕が上がる。