野にイケンあり〜ジャーナリスト武田一顕が詠む時政

政局や中国について【野の意見】を個人の備忘録として書き連ねる。 よろしくどうぞ。

みぎむきも ひだりも選挙は ひたむきに

ハンセン病元患者の家族へ賠償を命ずる

熊本地裁判決について、

政府は控訴しない方針を決めた。

9日朝、安倍総理が自ら発表した。

朝日新聞が当日朝の一面トップで、

「政府が控訴する方針」と

誤報を打ったというオマケもついた。

 

控訴断念について、

参院選真っ只中であることから

選挙目当てとの声も聞かれる。

そりゃ選挙目当てだろう。

普段は「前例」を盾に

国民の願いはできるだけ却下する行政が、

総理トップダウンの指示を演出して

前例踏襲を自ら破ったのだ。

 

ここからは評価の分かれるところだ。

 

選挙目当てで、行政の一貫性を捻じ曲げたのは

けしからんという人もいるだろう。

ハンセン病患者の家族のことを考えると

控訴断念という決定自体は歓迎したいが、

参院選の真っ只中にこうした決断を下した安倍に

あざとさを見る人もいるだろう。

 

私は、今回の決定は参院選にプラスに働くことは

間違いないと推察している。

あざといと思われようが、

これでハンセン病患者やその家族が

少しでも救われるならいいだろうと考え、

自民党に投票する人は増えるだろう。

少なくとも減ることはない。

 

もう一点。

 

選挙は、当事者はともかくとして、

その他の有権者から見ればゲームだ。

候補者Aと候補者Bが戦って、

どちらかが勝ち、どちらかが負ける。

ルールを守ることと、

命は取らないことが約束。

スポーツの試合を見るのと非常に似ているのだ。

 

ただ、政治ゲームは、

これは何点これは何点というのは分かりにくい。

その時に判断材料となるのは、

当事者がどれだけひたむきに

一生懸命ゲームに取り組んでいるかだ。

スポーツの試合だって、AKB総選挙だって、

点数だけで感動する訳ではない。

 

安倍は、2007年の参院選で惨敗して

惨めな退陣を余儀なくされた。

参院選へのトラウマや、そこにかける思いは

私たちの想像以上だろう。

どんなことをしても勝ちたい!と思う

情熱が伝われば、

そこに感動する有権者も出てくる。

 

十年一日のごとく選挙戦になれば、

政権批判を繰り返して自分たちの主張だけを

訴えている野党と、安倍と、

どちらが有権者の心を動かすだろうか。

たとえ権力を持っていない野党でも、

選挙前に共闘をより深化させるなど

懸命さをアピールする方法は

いくらでもあったはずだ。

参院選一人区で野党候補が伸び悩んでいるのは、

たとえ自公政権に疑念を持っていても

うわべだけの野党共闘よりはましだろうと

賢い有権者は考えているからに他ならない。

 

韓国への半導体材料輸出規制からも

参院選にかける安倍の熱意は伝わる。

報復措置の側面もあるが、

安倍政権の側から考えればなんといっても

選挙ファースト。

事実、世論調査を見ると、

輸出規制強化に賛成する人は

6割前後に上っている。

つまり、民意をうまく汲み取っているのだ。

 

選挙の実態は、政策の評価よりも

個々の候補者、政治家、

とりわけ各党党首のひたむきさが

投票行動を左右する。

その点で、今回の選挙は

すでに勝負がついた感がある。

 

あとは、そのひたむきさを

今回の参院選で最も強く打ち出している

山本太郎率いるれいわ新撰組

どのような結果を残すのか、こちらも注目だ。