野にイケンあり〜ジャーナリスト武田一顕が詠む時政

政局や中国について【野の意見】を個人の備忘録として書き連ねる。 よろしくどうぞ。

野に遺賢なし <TOP固定記事>

孔子が編んだ『書経』。

国家安定の条件として、賢人は全て官吏に登用され、

野=民間に残っていない様を

野(や)に遺賢(いけん)無し】とした。

それが今はどうか。

自分を遺賢と言うつもりは全くないが、

国会周辺に長くいた身として思うことは尽きない。

そんな【野の意見】を記していく。

拝啓 枝野幸男様

拝啓 枝野幸男

国会が閉会して、あなたの動静はまったく伝わってきません。
伝えないマスコミが問題だと少しでも思っているなら、それはあなたの間違いです。
マスコミが伝えざるを得ないような情報を発信するのが政治家のつとめです。
ましてやこの国のリーダーになろうとするならなおのこと。
魅力的な情報を発信できないなら野党第一党の党首は辞めた方が良いでしょう。

守株という言葉があります。
漢文の教科書にも出てくる有名な言葉なので、勉強家のあなたならご存じでしょう。
兎が走ってきて木の切り株にぶつかり、意識を失ったか死んだかしたのを宋の時代の農民が見ました。
こりゃいいやと、その農民は毎日その切り株のそばに座って、兎が来て頭をぶつけるのを待っていましたが、ついに兎は現れませんでした・・・
という韓非子の故事です。
2009年に政権交代が起きたとき、あなたは正にこの農民のように兎をとりました。
もしかして、今の自公政権が再度、切り株に頭をぶつけるとか思っていませんか?
権力は奪い取るものであり、自然と転がって来るものではありません。

コロナ失政で菅政権の支持率はガタ落ちです。
コロナ禍で日本政治の様々な問題が噴出しています。
解決できるのは政権交代だけです。
この点は、あなたも完全に同意してくれるでしょう。

あなたはオリンピックに関して「この段階で中止・中断すればかえって大きな混乱を招く」と話したそうです。
また開会を前に「目の前にある五輪は、もはや平和の祭典ではない」と述べたそうです。
まったくわかりにくい。
中止を求めてるのか求めてないのか、平和の祭典でなければ何の祭典なのか、そもそもいまや祭典でもないのか。
悪魔の祭典とかカオスの祭典とかコロナの引き金とか、なんでもいいからキャッチーなことを言わないと、国民は日々仕事などで忙しいので、いちいち野党党首ごときの言葉を斟酌することはしません。

「枝野ビジョン」という著書もそうで、お書きの内容はいちいち正しいのかもしれませんが、ハッキリとした物言いが少なすぎるんです。

マスコミは、自分たちが政権与党に気兼ねして言えないことを野党党首が言ってくれた時に報道する場合が多々あります。

勝手なものです。

枝野発言が報道されないのは、あなたの言葉が高尚過ぎてアフォな記者や編集幹部にはわからないからという部分が大きいのでしょう。
読売新聞は7月31日付の紙面で「緊急事態拡大 緩みは五輪のせいではない」という社説を掲載しました。

https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210730-OYT1T50388/

等しからざるを憂うと言いますが、五輪のテレビの中で泣いたり笑ったり喜んだり抱き合ったりするのを見れば、誰でも同じ権利が自分にもあると思うでしょう。
それなのに五輪のせいではないなんて、ここまでくると人民日報を通り越してフェイクニュースです。
大新聞がここまで緩んでいるのも、枝野様、あなたが政権を取るなんて誰も思っていないからです。
あなたの時代がもしかしたら来るかもと思えば、こんな菅政権礼賛社説を載せることをさすがに躊躇するでしょう。

最後に人事のことについておこがましいながら一言申し述べておきます。
あなたの膝下には、当代随一の選挙巧者であり、二度の政権交代を成し遂げた人がいます。
バカと小沢は使いようで、来るべき総選挙で政権を取るおつもりがあるなら、こういう人を使わない手はありません。
あなたの党は、選挙で落選経験のある人を選挙担当にしていますが、これは笑い話でしかありません。
漢を興した劉邦は、左遷中に招賢堂を建てて、韓信を登用しました。
当時どこの馬の骨ともわからなかった韓信の実力を見抜くより、小沢を抜擢する方がはるかに楽なことだと思うのですが、いかがでしょう。

以上、縷々申し述べました。
失礼は承知ですが、あなたが一刻も早く野党第一党の党首を辞めることが、この国の民主主義のため、政権交代のためだと改めて申し上げ私信といたします。

読まないだろうけど…

ひらい(平井)たら 中は白いか ワニ大臣

漫画家・東海林さだおのエッセイに

「野菜株式会社」というのがある。

人事も結局は見た目で、

大根やカボチャは堂々としているという

理由だけで評価が上がり、

キュウリはいくら実力があっても

なよなよしていて昇進なんかさせられない・・・

こんな内容だったと記憶している。

一企業の中の話ならまだしも、

国家を運営する大臣が

見た目だけで判断されたのではかなわない。

 

平井卓也・デジタル担当大臣が省内の会議で

東京オリパラ向けアプリの事業費削減をめぐり、

請負先企業のNECについて

「脅しておいた方がよい」などと指示した問題を

朝日新聞が報じた。

続いて週刊文春が、この会議の録音の中で

平井自身と近い関係にあるベンチャー企業

参加を求める発言をしていたと報じている。

平井は「脅迫大臣」「恫喝大臣」などと

ネットで叩かれている。

しかし、私が聞いた真相は全く異なる。

 

そもそも、NECへの発注額は

この手のアプリにしてはかなり高かったそうだ。

平井は、内閣府の担当者とNEC

癒着していることにうすうす感づいた。

そこで、この省内会議に出席していた

件の担当者を間接的に叱責する目的で

NECを「脅しておいた方がいい」と

牽制したと言うのだ。

証拠のない、もしくは証拠が薄い状況で

直接本人を叱責することを控えたのだろう。

 

また、録音の中では「おまえの判断も悪い。

そんな仕事受けるな、元々」と、

平井が「おまえ」呼ばわりする人物が登場する。

この人物こそ、平井が癒着を疑っている担当者。

この人物は大学で教鞭をとっていたこともあり、

大学での研究にNECからも金が出ている。

その分を政府発注の価格に

上乗せしているのではないかと

平井は訝しんでいたのだ。

政府内では、今回の録音データを

ダウンロードした形跡についても調査している。

もし件の担当者がダウンロードしたとすれば…

平井の叱責への苛立ちと

自分の行動への後ろめたさから、

ネタをメディアに売った可能性が出てくる。

 

平井をよく知る人によれば、彼は

地位をかさに着て威張るようなタイプではなく、

どちらかというと人の好いボンボンだという。

麻生財務大臣のように口汚いところもなく、

脅すような言葉は聞いたこともないそうだ。

では、今回の録音騒ぎで

どうして非難の嵐を浴びているのか?

私はどうも、平井の見た目と

関係があるように思えてしかたがない。

平井の浅黒く精悍な顔立ちは、

ともすれば強面の政治家に見られやすい。

彼が温情政治家と言うつもりはさらさらないが、

これから出てくる調査結果をよく見て

事の真相を判断しなければならない。

 

孟子

「ことごとく書を信ずれば、

すなわち書無きにしかず」と遺した。

無批判にすべてを信じ込むようならば、

書物など読まないほうがよいという意味だ。

朝日新聞週刊文春が必ず正しいなどと、

ゆめゆめ思わぬことだ。

彼らは件の担当者の話も知っていて、

敢えて掲載していないのだから。

かろうじて 百合は開くか これからも

7月1日、中国共産党創立百周年記念大会が

北京の天安門広場7万人を集めて挙行された。

習近平国家主席の演説は、

「外国のいかなる圧力も許さない」

中華民族の復興」など

ナショナリズム色の強いもので、

日本ではさんざんな評判だ。

しかし、当然良いことも言っている。

『以史為鑑』歴史を鑑(かがみ)とせよ、

お手本にしなさいと言う意味だ。

今回の都議選で、滅びるだろうと言われていた

都民ファーストの会

あにはからんや31議席も獲得したのを見て、

その言葉を思い出した。

まず、小池都知事の動向を中心に

今回都議選を振り返ろう。


都議選告示直前の6月22日、

小池が突然、過労による入院を発表。

東京都ばかりか永田町でも衝撃が走った。

ただ、永田町関係者で

小池の過労を信じる人は皆無に近かった。

小池は倒れる前、自民党の二階幹事長と

会談している。

実はこの席で、二階は小池に対し、

都民ファースト候補の応援演説をする場合、

自民党候補の演説もするよう求めた。

都議選の千代田選挙区を念頭に置いたものだ。

しかし、都ファの特別顧問を務める小池が

自民候補の街頭演説をするなど

できるはずもない。

つまりは『都ファの応援演説に立つな』という

事実上の通告だった。

一方、もし小池が約束を守ったならば、

都議選で自民党が第一党になった際、

自民が小池を今後支えるという見返りがある。

この事態に、さすがの小池も逡巡したであろう。

苦肉の策として過労で倒れるという

選択肢を選んだと、私は踏んでいる。

入院なら、街頭演説に立つ必要もない。

(なお、この件については6月26日に配信した

この動画の中で話している)


ところが。

投開票の1週間前の世論調査を見ると

自民の旗色は芳しくなく、

都ファが意外に議席を伸ばす可能性が出てきた。

だったら都ファの応援をしたい。

しかし、国政への唯一のパイプである

二階との約束を反故にもできない。

そこで小池は投開票前日の3日、

都ファ候補の元を回るが一言もしゃべらない】

という奇策に打って出たのだ。

過労から回復したばかりで声が出ないことを

言い訳にすれば演説しなくて済むし、

ギリギリの線で二階との約束は守れる。

そう踏んだ小池は、各候補の事務所を回った。

その姿に、戦う女性の姿を見た無垢な有権者

雪崩を打って都ファに投票したというのが、

今回選挙の顛末となる。


思えば、小池は4年前の都議選で

都ファを勝利に導いた後、

希望の党を結成して国政に挑んだものの、

自身の排除発言で勢いは大失速。

その後、希望の党は雲散霧消した。

2017年の総選挙では相変わらず自公が大勝し、

民主主義の主役である野党は

壊滅に近い状態に追い込まれた。

野党をズタズタにし、

民主主義と議会政治が絶望の淵に立っている

今の日本の状況を作ったのは、

まぎれもなく小池なのだ。

小池に期待する無知な国民も、

都ファに入れざるを得なかった無垢な都民も、

4年前から今回の選挙にかけての

裏のカラクリを知ると、

自分の一票がどのような意味を持つものだったか

愕然とするのではないだろうか。


歴史と言っても、

それほど昔のことを学ぶ必要はない。

ついここ10年、しかも1人の政治家を通しての

歴史を見るだけでも、

政治に騙される確率はずいぶん減るのだ。

 

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希望の党の街頭演説取材時、右手前が筆者

耳澄まし 聞くべき ゴーン 音の裏

元日産会長のカルロス・ゴーン

レバノンベイルートで記者会見を開いた。

北朝鮮や中国から国外に亡命した人と

似通っている部分があるので、

気づいたことを書いておく。

 

ゴーンにコケにされた検察、裁判所、法務省

及び日本政府が彼を非難するのは、

よくよく理解できる。

一方、マスコミとそこに登場する評論家や

コメンテーターのほとんどが

ゴーンを強く非難している。

また、本来は人権を守ってくれるはずの弁護士、

就中、ヤメ検と呼ばれる弁護士も、

私の知る限り、郷原信郎弁護士を除いては

ことごとくゴーンを糾弾している。

この様を見ていると、

中国共産党と中国国内のマスコミが

インドに亡命したチベットダライ・ラマ14世

非難している様子と、とても似通っている。

中国と違い、日本では表現の自由

保障されているというなら、

もう少し多様な意見があってもいいが

どうなのだろう。

 

ゴーン会見については、

逃亡経路を明かさなかったことに

海外からも批判が出ている。

ただ、常識で考えて

「私は〇〇にいくら支払って、〇〇と××空港を

経由して、今ここレバノンベイルートにいます」

なんて喋る訳がない。

また、自分を陥れたとする日本政府関係者の名前を

明かさなかったことにも批判と落胆の声が

挙がっているが、これも的外れの非難。

ゴーンは、今回の脱出劇をいわば“亡命”と

考えているはずだ。

亡命した者は、本当の国家機密は漏らさない。

これは自らの生命の安全を守るためであり、

全部喋ってしまうと、暗殺者を送られて

殺されかねないからだ。

本当の秘密は、亡命者が死亡したのちに

ようやく出てくる。

 

例えば、97年に北京経由で韓国に亡命した

朝鮮労働党の大幹部

黄長燁(ファン・ジャンヨプ)元書記は

体制批判を繰り返したが、国家機密に類することは

一切、漏らさなかった。

一方で、黄長燁が死亡してしばらく経った後の

2013年12月、韓国中央日報がこう報じた。

黄は韓国国家情報院に対し、

北朝鮮にいた当時、金正日打倒のクーデターを

金の親戚に当たる張成沢チャン・ソンテク)と

共に企てていたことを話した、と。

真偽のほどは分からないが、

その後に張が無残な形で正日の息子・金正恩

処刑されたことを考えると、

あながち荒唐無稽ではないかもしれない。

 

ゴーンは、日産に在職していた当時も

常に身の安全を図っていたという。

今回、多額の金を支払い、

危険を冒して得た自由と生命。

みすみす失うのは惜しいことを考えると、

日本政府関係者の名前を明かさなかった理由も

分かってくるのだ。

 

日本から違法に出国したから悪いヤツ…などという

分かりきった非難だけでなく、日本の司法制度に

世界から厳しい目が向けられていることも

マスコミは自覚すべきだ。

ヒステリックにならず、

冷静にゴーンの主張にも耳を傾けた方がいい。

枝のミカン ならずに腐る ものもある

新年、明けましておめでとうございます。

本年もマイペースに更新をして参ります。

 

冬といえば、ミカン。

ミカンは、長い時間が経つと

まずまわりにカビが生えてくる。

薄皮の中の種は最後まで守られるが、

その頃には、周囲は全部腐っている。

 

安倍政権は2012年に第二次内閣を

組閣してから約7年、

2006年に発足した第一次安倍政権を含めると

8年以上続いている。

第二次政権が誕生してから日本の政治は安定し、

一部の人々は好景気を謳歌している。

一方で、桜を見る会にはマルチ紛い商法の会長が

総理枠で招待されていたことが

ほぼ確定的となっているのに、

名簿は廃棄されていると役人は答え続けている。

森友問題で公文書が改ざんされていたのと同じ

根深い問題だ。

 

経産大臣に就任した菅原一秀衆議院議員

秘書が有権者に香典を配ったことで、

また法務大臣に就任した河井克行衆議院議員

妻が選挙スタッフに公職選挙法

上限額以上の金を渡していたと疑われ、

就任から3週間と経たないうちに

相次いで辞任に追い込まれた。

二人とも、辞任後も一連の経緯について

説明すると言っていたが、その後

臨時国会に出てきて説明することはなかった。

 

外交では、元々従属関係にある日米は順調だし、

日中関係も改善した。

ただ、プーチンにしてやられ、北方領土交渉で

四島が返還される可能性ほぼゼロ。

北朝鮮拉致問題も解決のメドが立っていない。

米朝関係もキナ臭くなってきていて、

トランプ頼みの安倍は

デッドロックに入ってしまった感がある。

箱の中のミカンは最初の一個が腐ると

周りが全部腐るというが、

私たちは安倍政権と一緒に

この日本国を腐らせるわけにはいかない。

 

そこで政権交代となるのが普通の先進国だが、

日本では一体誰が交代するのか。

立憲民主党と国民民主党の合流話しは

12月中旬ごろまでは盛り上がっていて、

年内にまとまるのかと期待されたが、

結局、年明けに先送りされた。

政党助成金目当てと見られることはなくなったが、

やっぱり先立つものは金だ。

来年も助成金をもらえないとなると、

いざ解散総選挙となった時、

潤沢な資金を持つ自民党

後れをとることは確実である。

 

私は当初、国民民主側が選挙目当てで

なんとしても立憲と組みたいという

一種の片想いだと信じていた。

しかし、どうやら違うらしい。

国民民主党のベテラン議員に聞いたところ、

何でも反対の社会党みたいな体質の立憲とは

組めない、とのことだ。

確かに、立憲の枝野代表を見ていると、

衆院選過半数議席を取って政権を奪取し

自らの政策を実現するという意欲があるようには

とても見えない。

正しいと信じることだけ言って民意が集まるなら、

政治学者や哲学者でも政権を取れる。

小異を残して大同を求め、清濁併せ呑まなければ

天下なんか取れっこない。

しかし、それが枝野にはわかっていない。

 

安倍への不満は噴火寸前まで来ている。

こうした意味で、2020年の政界の準主役は

本来、石破茂でも河野太郎でも、

だいぶ脱落しちゃった小泉進次郎でもなく、

枝野のはずだ。

 

2020年。

早い時期に野党を糾合して、
枝野三日会わざれば刮目となるかどうか・・・

もしそれができないなら、

どうかこの国のために第一党の党首を、

政治家を辞めて頂きたいと切に願う。

 

家にこたつはないけれど、

ミカンを食べながら日本の民主主義を憂える

新年なのであった。

自己崩壊 とどめる鉄の 鎧かな

香港の林鄭月娥(りんていげつが/キャリーラム)

行政長官が、内外で猛烈な批判を浴びている。

日本でもNHKなどが彼女を『鉄の女』と称し、

血も涙もなく若者を弾圧する冷たいイメージを

植えつけている。

本当にそうなのだろうか?

当事者の香港市民があれこれ言うのは構わないが、

三者である我々は冷静な目を持つべきだ。

頼まれてもいないが、今回は林鄭について

少し引いたところから考えてみる。

 

 

林鄭は1957年、香港で貧しい家庭に生まれながら

香港大学を卒業し、1980年に香港政庁に就職した。

当時の香港はイギリスの植民地だ。

その後、エリート官僚として順調に出世し、

2017年、香港のトップである行政長官に

中国政府から任命された。

中国に返還されたあとの香港は、

外交、国防を中国共産党に握られている。

高度な自治は保証されているが、

所詮、中共の意向には逆らえない。

我が国がアメリカに逆らえないよりも

もっと従属的な関係である。

習近平を親会社の会長とすれば、

林鄭は子会社の社長。

稼ぎは大きいが、あくまで子会社。

それが香港だ。

 

彼女は2014年の香港で雨傘運動が起きた際、

学生たちの要求に屈しなかったので、

「鉄の女」と呼ばれるようになった。

しかし、当時は香港政府の一介の局長。

中国共産党の意向を伝える伝令の役でしかない。

それをもって「鉄の女」というなら、

役人はすべて鋼鉄となってしまう。

むしろ彼女の物腰はソフトでスマートであり、

2014年以降の香港内で、彼女の人気は高かった。

 

林鄭はおそらく自分の限界を知っていたのだろう。

行政長官選挙には出馬しないとずっと言っていた。

官僚としては超優秀だが、政治家には

向いていないと自覚していたに違いない。

にも関わらず、前長官の梁振英が下手を打って

再選に出馬できない状況となり、

長官などやりたくない林鄭が祭り上げられた。

香港で生まれ育った人々の法治、人権、

自由への考えは、日本人より進んでいる。

それは民主派も親中派も同じで、

ほとんどの香港人は、中国本土の今の状況が

良いなんて思っていない。

制度としても、それらへの考え方は進んでいる。

マスク禁止条例が出たとき、香港の裁判所が

基本法に違反している」と、香港政府を断じた。

これは象徴的な例だ。

ましてや大卒の知識人である林鄭は、

自由への意識が染み付いている。

それなのに、中国共産党の法治、人権、自由を

無視したかのような理不尽な要求に、

子会社の社長として従わなければならない。

林鄭の心中を思うとき、

それが香港の苦悩のように見えてしまうのは、

あまりにも贔屓目だろうか。

 

鉄の女、林鄭。

溶けて無くなりそうな内面を保つために、

彼女は益々、分厚い鉄の鎧を

まとわなければならないのかもしれない。

報復に 若鳥さらす タカ総理

ブログなどのSNSで自慢は禁物ということだが…

当ブログで参院選翌日に指摘した通り、

自民党二階幹事長の続投が決まった。

新聞記事などを読むと、

二階続投については紆余曲折があったようだ。

と言うのも、安倍総理は岸田政調会長

幹事長昇格を画策したようだ。

叩き上げの党人派である二階より、

三世議員で温厚な岸田は

隣県の広島選挙区選出でもあり、

安倍にとっては与しやすいのだろう。

 

ただ、選挙に弱いのは岸田の大いなる弱点だ。

自分の選挙ではなくて、自分の派閥の選挙。

岸田派はこの参院選、岸田の地元・広島を含め

現職4人が落選した。

こんな人が選挙を差配する幹事長になったら

俺達みんな落選しちゃうよ…と思う自民党議員は

挙って岸田幹事長就任に反対する。

さしもの安倍も、贔屓の引き倒しは

できなかったということだ。



さて、今回の内閣改造は、台風15号の被害で

千葉県内に大規模停電が発生する中で行われた。

99年10月1日、当時の小渕総理が内閣改造

行おうとしたが、前日に東海村で臨界事故発生。

これを受けて、改造を延期したことがあった。

一方で、今回の千葉の大停電は

何十万世帯が大変な状況にある最中にも関わらず

災害対策よりも改造を優先したとして、

安倍政権への批判が強まっている。

 

そんな中、小泉進次郎が入閣。

これは内閣改造の前々日=9日に決まったとの

ことだが、10日朝の時点でも、

小泉入閣は見送りと報じている社があった。

つまり政権側は、マスコミ各社に

ガセネタをつかませた格好となった。

御用新聞、御用放送局は唯々諾々と

政権に従うかもしれないが、

いやしくも報道の自由を掲げる多少骨のある

メディアなら、報復しなければならないのが

この業界の掟だ。

特ダネをくれるネタ元には服従し、

ガセネタを掴ませるネタ元には復讐を。

手始めは、千葉大停電で対策の出足の遅れた

政権への批判、

次は小泉環境大臣のスネの傷を探すことになる。

数々の女性遍歴を暴露された小泉だが、

カネの問題はないだろう。

ならばどんなスキャンダルが飛び出すのか、

注目である。