野にイケンあり〜ジャーナリスト武田一顕が詠む時政

政局や中国について【野の意見】を個人の備忘録として書き連ねる。 よろしくどうぞ。

耳澄まし 聞くべき ゴーン 音の裏

元日産会長のカルロス・ゴーン

レバノンベイルートで記者会見を開いた。

北朝鮮や中国から国外に亡命した人と

似通っている部分があるので、

気づいたことを書いておく。

 

ゴーンにコケにされた検察、裁判所、法務省

及び日本政府が彼を非難するのは、

よくよく理解できる。

一方、マスコミとそこに登場する評論家や

コメンテーターのほとんどが

ゴーンを強く非難している。

また、本来は人権を守ってくれるはずの弁護士、

就中、ヤメ検と呼ばれる弁護士も、

私の知る限り、郷原信郎弁護士を除いては

ことごとくゴーンを糾弾している。

この様を見ていると、

中国共産党と中国国内のマスコミが

インドに亡命したチベットダライ・ラマ14世

非難している様子と、とても似通っている。

中国と違い、日本では表現の自由

保障されているというなら、

もう少し多様な意見があってもいいが

どうなのだろう。

 

ゴーン会見については、

逃亡経路を明かさなかったことに

海外からも批判が出ている。

ただ、常識で考えて

「私は〇〇にいくら支払って、〇〇と××空港を

経由して、今ここレバノンベイルートにいます」

なんて喋る訳がない。

また、自分を陥れたとする日本政府関係者の名前を

明かさなかったことにも批判と落胆の声が

挙がっているが、これも的外れの非難。

ゴーンは、今回の脱出劇をいわば“亡命”と

考えているはずだ。

亡命した者は、本当の国家機密は漏らさない。

これは自らの生命の安全を守るためであり、

全部喋ってしまうと、暗殺者を送られて

殺されかねないからだ。

本当の秘密は、亡命者が死亡したのちに

ようやく出てくる。

 

例えば、97年に北京経由で韓国に亡命した

朝鮮労働党の大幹部

黄長燁(ファン・ジャンヨプ)元書記は

体制批判を繰り返したが、国家機密に類することは

一切、漏らさなかった。

一方で、黄長燁が死亡してしばらく経った後の

2013年12月、韓国中央日報がこう報じた。

黄は韓国国家情報院に対し、

北朝鮮にいた当時、金正日打倒のクーデターを

金の親戚に当たる張成沢チャン・ソンテク)と

共に企てていたことを話した、と。

真偽のほどは分からないが、

その後に張が無残な形で正日の息子・金正恩

処刑されたことを考えると、

あながち荒唐無稽ではないかもしれない。

 

ゴーンは、日産に在職していた当時も

常に身の安全を図っていたという。

今回、多額の金を支払い、

危険を冒して得た自由と生命。

みすみす失うのは惜しいことを考えると、

日本政府関係者の名前を明かさなかった理由も

分かってくるのだ。

 

日本から違法に出国したから悪いヤツ…などという

分かりきった非難だけでなく、日本の司法制度に

世界から厳しい目が向けられていることも

マスコミは自覚すべきだ。

ヒステリックにならず、

冷静にゴーンの主張にも耳を傾けた方がいい。