野にイケンあり〜ジャーナリスト武田一顕が詠む時政

政局や中国について【野の意見】を個人の備忘録として書き連ねる。 よろしくどうぞ。

買ったのは 歓心だけか 新ディール

イギリスがドイツの猛攻にさらされる最中の

1941年8月。

イギリスのウインストン・チャーチル首相は、

アメリカのルーズヴェルト大統領と

戦艦プリンス・オブ・ウェールズ上で対峙した。

二人は大西洋憲章を発表。

アメリカがヨーロッパ戦線に参戦することが

この時に決まった。

 

      私ほど、妾のように

      ルーズヴェルトに仕えた男はいない

 

後にチャーチルは自虐的にこう語ったが、

ルーズヴェルトの歓心を買うことに成功し、

イギリスとヨーロッパは

ヒトラーの魔手から解放された。

安倍総理によるトランプ大統領への

『おもてなし』を見ていて、

チャーチルの言葉を思い出した。



アメリカの大統領が海外を訪れる際、

一か国だけを訪問してトンボ返りするのは異例で

日本重視の表れだというが、

そんなことをありがたがる人がいるというのも

私には驚きだ。

日本の首相などアメリカにしょっちゅう

トンボ返り訪問をしている。

世界ナンバーワンの国のトップの歓心を買うとは

これほど大変なことなのかと、同情を禁じ得ない。

 

安倍のおもてなし外交は

一定の成功を収めたように見える。

何度も自賛していたように、

日米同盟が強いことを世界にアピールできた。

すなわち、中国の習近平、ロシアのプーチン

そして北朝鮮金正恩のそれぞれに対し、

自分が仲介者になれると誇示できたのだ。

一方、韓国の威信低下が顕著だ。

これまで韓国は、アメリカ要人が訪日すると

韓国も訪れるよう懇願してきた。

(まあ、これは日本も同じだが)

今回トランプが日本だけを訪問して

韓国を素通りしたのは、

文在寅を信用していないというサインであり、

彼と彼の取り巻きにとっては打撃だろう。

文在寅米朝の橋渡し役として存在感を示し、

安倍総理は蚊帳の外に置かれていた感のある

昨年の今ごろとは、えらい違いだ。


ところで、

チャーチルルーズヴェルトの歓心を買い、

国家の独立とプライドを守った。

ただ、代償としてイギリスは海外領土を失い、

世界における軍事的・経済的優位を

アメリカに譲るなど、大きな犠牲を払った。

安倍総理はトランプのご機嫌を取り、

一見、アジアにおける日本の外交的優位を

勝ち取ったようだが、

国民に何を与えてくれるのか。

逆に、いったい何を犠牲にしたのか。

大きな視点でアメリカ追随の功罪を

分析することが必要だ。