野にイケンあり〜ジャーナリスト武田一顕が詠む時政

政局や中国について【野の意見】を個人の備忘録として書き連ねる。 よろしくどうぞ。

雑魚も数 始まる二階の 追い込み漁

参院選翌日のワイドショーは
未明までの速報合戦など忘れ去ったかのように
吉本興業の話題一色だった。
これが、この国のレベルだと痛感した。
しかし、仕方ない。
議会制民主主義の主役であるはずの野党の
弱体化が止まらず、
結局はワイドショー的にちっとも
「面白くないコンテンツ」だからだ。

 

立憲民主党は今回、17議席とほぼ倍増した。
しかし、枝野代表は
立憲民主党の政策に支持が集まったなどとは
ゆめゆめ考えないほうが良い。
あくまで安倍政権への批判票が集まっただけで、
枝野や党の政策に支持が集まった結果ではない。
投票率が高くなれば
野党の得票数が増えるというのは
国政選挙の常識だが、
今回投票率は50%を割った。
これは、自公政権には批判的だが
野党にも入れたくないという人や、
そもそも、それぞれの野党の正体が一体何か、
よく分からない人が多かったと取るのが
自然だろう。

一方、自民党内では岸田派への打撃が大きい。
派閥の領袖は岸田政調会長
政調会長とは自民党の中で、
三番目か四番目に偉いヒト。
であるにも関わらず、
派閥所属の現職候補が4選挙区で敗れた。
特に岸田の地元広島では、
参議院自民党のトップである
参議院議員会長を歴任した溝手顕正
一敗地にまみれた。
岸田はこれまで屈辱に耐えて安倍に仕え、
情けないとも可哀想とも言われてきたが、
政界で選挙に弱いことだけは
どうにも言い訳ができない。
9月に予定されている内閣改造と党人事で
岸田の幹事長登用の芽は
なくなったと見るべきだろう。

替わって、再び頭角を現した(?)のは、
幹事長の二階俊博だ。
池上彰氏に対し、憮然とした態度を
隠そうともしない政界の老獪で老練な実力者は、
自公で改選過半数を達成するやいなや
インタビューで安倍4選への支持を
早々に打ち出した。
安倍は、憲法改正を成し遂げるために
国民民主党の所属議員に秋波を送っているが、
彼らの取り込みに
二階の手腕は欠かせないだろう。

 

1996年の総選挙のあと、
当時の野中広務自民党幹事長代理は
敵である新進党から議員を引き抜き、
次々と自民党に復党させた。
石破茂高市早苗はこのときの復党組だ。
相手の政党から一人また一人と
まさに一本釣りして所属議員を増やすことから、
野中は当時、自らを
「釣り堀の親父」と称していた。

 

野中が一本釣り漁師なら、
小沢一郎は投網の漁師。
1993年の細川連立政権では
自民党から大量の離党者を引き連れ、
2012年の消費税政局では
民主党から消費税増税反対の一大勢力を
わんさか網に入れて離党した。

二階は、小沢の片腕・野中の盟友として
二人の政治手法を間近で見てきた。
一本釣り漁師の野中、投網漁師の小沢…
二階はさしずめ、追い込み漁師か。
こっちの餌はうまいぞと誘い込み、
自分の群れへと追い込む。

 

今後、国民民主党に二階の魔の手(?)による
追い込みが始まるのは確実である。
その証拠に選挙前、二階は早くも動いた。
細野豪志だ。
政権に入りたいなあ、
あの大群に加わりたいなあと思う
国民民主党の小魚たちにとって、
少し前に二階派入りした細野豪志
絶好のケーススタディだ。
あれだけ最初は群れに虐められた細野も、
いまやなんとなく馴染んでいる風だ。
すいすいと泳いでいるように見えるではないか。
これなら、と思う国民民主の議員は
少なくないはずだ。

 

二階が深謀遠慮をめぐらす様は、
安倍も一目おかざるを得ない。
群れの拡大のために、
追い込み漁師・二階幹事長が不可欠だと
安倍は判断し、9月の改造後も続投させるのは
間違いないとの見方が早くも浮上している。

 

大海に泳ぎ出て、
大きな魚に食べられそうになったり
波に打ち付けられたりしてもなお、
自由を望むのか。
美味しい食(職)に誘われて群れに追い込まれ、
大群の中の一匹として生きていくのか。


二階の追い込み漁が始まる前に、
野党議員は、自分はどうありたいのか
とっくりと自問しなければならない。