野にイケンあり〜ジャーナリスト武田一顕が詠む時政

政局や中国について【野の意見】を個人の備忘録として書き連ねる。 よろしくどうぞ。

黄昏と 裏切り交じりの 県知事選

いささか旧聞に属するかもしれないが、

参院選直前、安倍総理がある人物と会ったことが

その筋で話題になった。

7月21日各紙の総理動静を見ると、

青森、岩手で参院選の応援演説を終えた安倍は、

午後6時半に岩手県一ノ関駅で1分間だけ、

社団医療法人 啓愛会の井筒岳理事長に会ったと

書いてある。

たった1分間の、面談というより立ち話。

しかし、岩手県内には衝撃が走った。

 

啓愛会は、岩手県宮城県で8か所の

医療・介護施設などを運営する医療法人。

うち7か所は岩手県内にあるので、

岩手の大手病院ということになる。

医療関係者が大票田なのは周知のとおり。

ただ、それだけで総理大臣が

選挙中の忙しい時期に会うわけがない。

実は、井筒理事長は親の代から、

国民民主党小沢一郎の後援会幹部。

親子二代にわたり小沢を支持していたが、

ついに袂を分かち、自民党へと重心を移したのだ。

かつて小沢王国とうたわれた岩手での寝返り劇は、

小沢の落日ぶりの一端を示すものかもしれない。

 

小沢は、93年に自民党を下野させ、

細川連立政権を樹立。

事実上、戦後初の政権交代を成し遂げた。

その後、2009年の民主党代表の時、

検察の捜査で秘書が3人逮捕され、

代表を辞任するが、その後、鳩山政権を樹立した。

77歳になる小沢は、もう一度、

3回目の政権交代を成し遂げない限り、

死んでも死にきれないと漏らす。

他方、政治家を引退したら、好きな釣り三昧で

暮らしたいとも話しているという。

どちらも本音なのだろう。

 

時あたかも岩手県知事選の最中。

9月8日に投開票が行われる選挙では、

現職の達増知事が優勢と伝えられている。

参院選ではなんちゃって連合だった野党も、

岩手では流石に立憲民主・国民民主・共産・社民が

早々にタッグを組み、

自公推薦候補との与野党全面対決となっている。

地方首長選挙は現職有利がセオリーなので、

ここで達増が負ければ、本当に小沢の落日だが…

果たしてどうなるのか。

 

小沢の政治手法はステルスとか潜水艦と言われる。

死んだふりして、見えないところで動き、

最後に政権をひっくり返す。

93年でも2009年でも政権交代の前、

小沢は死んだとしきりに言いふらされたものだ。

今回も小沢は死んだふりのように見える。

少なくとも多くの人は、

彼はもう過去の政治家だと考えているだろう。

生ある限り、こうした言われ方は

小沢にとっては歓迎すべきことなのだろう。

知り難きこと陰の如く、動くこと雷の如しだ。

 

ただ、冒頭の安倍と井筒の面会を見る限り、

自民側は今も小沢が死んだとは思っていないから、

このようなキメの細かい芸を見せるのだろう。

権力闘争は、見えにくい細部で起きている。

国民の大多数が小沢は終わったと思っていても、

圧倒的権力を持つ政権は甘く見ていない。

となると尚更、小沢の夢見る3回目の政権交代

そうそう簡単なものではない。

もともと常人離れした難しいことではあるが…